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徳島家庭裁判所 昭和52年(少)796号 決定

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

1  虞犯事実

少年は、昭和五一年九月二四日業務上過失傷害により徳島保護観察所の保護観察に付されたが、保護観察官及び保護司の指導に従わず遵守事項を遵守しないのみか、家財道具持出、家出、浮浪及び遊興を繰返すうえ、就業せず、保護者の正当な監督に服さず、異性とも不健全な遊興に耽り、自己の徳性を害する行為があるので、その性格と環境に照らし、将来犯罪を犯す虞れがある。

2  中等少年院に送致する理由

保護観察官の少年に対する質問調書、調査官作成の各少年調査票、少年鑑別所作成の鑑別結果通知書、各学校長作成の各学校照会回答書及び保護者作成の保護者照会回答書並びに当裁判所の審判の結果によれば、少年は、現在においても精神的にかなり未熟なうえ、社会化がほとんどなされておらず、立直りの意欲もみられないばかりでなく、保護観察中の身でありながら自由奔放を極め、保護者はおろか保護観察官や保護司の手にも負えない有様であつて、このような状況のもとにおいては、将来犯罪を犯す虞れがあるものと認められ、これを更生させるためにはある程度長期間施設収容のうえ、体系的な教育指導が必要と考えるので、中等少年院のうち、長期処遇課程が最も適当と思料する。

3  保護処分期間を指定しない理由

本件少年については、長期処遇課程が最も適当と思われる点は上記のとおりであるが、これとは別に、本件は、犯罪者予防更生法四二条一項の通告にもとづいているので、保護処分期間を定める(同条三項)必要があるか否かが問題となる。これについては積極説もあるが、消極説が妥当と考える。けだし、同条三項で保護処分の期間を定めなければならない旨定めた趣旨は、少年を矯正する必要上二〇歳以上でも、二三歳を越えなければ例外的に保護処分を認めるものの、その場合には、保護処分が多かれ少なかれ自由を拘束する点に鑑み、人権保障の見地から、決定段階で明確な保護処分期間を定めることが妥当と考えられるからである。しかし、少年が二〇歳に達していない場合には、原則どおり、執行段階で、少年期の特性に応じ、弾力的に矯正の期間を運用するのが妥当と考えられるのであつて、二〇歳に達していない場合にも決定段階で保護処分の期間を定めるべき実質的理由は見出せない。また、これを規定の仕方からみても、犯罪者予防更生法四二条一項で、本人が二〇歳以上の場合にも通告できるとし、これを受けて同条二項で、通告を受けた本人が二〇歳以上であつても少年法上の少年とみなしており、この項は、かような擬制少年を認める必要上設けられたもので、それ以外に本人が二〇歳未満の場合についてまで規定しているものとは解せられない。そして、同条三項の「前項」というのは、上記二項のことであるから、この三項の中には二〇歳未満の少年は含まれていないことになる。

上記のように解したので、当裁判所としては、二〇歳未満である本件少年について、長期処遇意見に留め、期間の指定まではしなかつた次第である。

よつて、少年法二四条一項三号、少年院法二条三項により、主文のとおり決定する。

(裁判官 大島哲雄)

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